神経麻痺 ~結構身近なマヒの話~
「神経麻痺」などというと特殊な病気に聞こえますが、脳疾患などの中枢性の麻痺を除けば、結構身近にみられます。
手がダランとして力が入らず手首を反らせない「下垂手」を呈する「橈骨とうこつ神経麻痺」、足首がダランとして膝下に力が入らない「腓骨ひこつ神経麻痺」などは代表的なものです。
これらの「神経麻痺」は、「正座をして足がしびれて感覚がおかしくなり、力が入らない」のと似たようなものですが、それよりはもっと重傷で治癒も長期間になります。
完全麻痺なら神経の障害でしょうけれど、程度の違いで同じ疾患のように言われる「しびれて筋力が出ない」などという「不全麻痺」は、以前にも書きました「筋、筋膜性疼痛症候群」による筋肉自体の問題かと思います。が、昔から「神経が半分ほど障害を受けた状態」という、いい加減な言い方になっています。
今回は、そこを突っ込むと話が長くなりますので、スルーします。
「腓骨神経麻痺」の原因としては、足の骨折でギプスをした時や、固い床であおむけに寝ていた時などに起こります。
最近よく見る「足のむくみ防止のストッキングの膝下」の締め付けも、個人的にはちょっと危ないかなと思います。
腓骨神経は、主に下肢の筋肉や脂肪の下を通っているため、ほぼ外からの刺激にさらされません。
しかし、膝のすぐ下にある出っ張った「腓骨頭」という場所で体の表面近くを通るため、簡単に圧迫され、そこで神経麻痺を起こします。
症状としては、ふくらはぎの筋肉や前脛骨筋などのスネの筋肉の、完全麻痺や不全麻痺による知覚障害や筋力低下です。
歩行時につま先が上がらず、引っ掛けて転びやすくなり、踵を着くと足首が体重を支えきれないので、足裏が床にペシャン、ペシャンと着きます。
そういう歩き方をしていると、足首に負担がかかり、捻挫の様な腫れや痛みも現れてきます。
こういった麻痺は一時的なものが多いのですが、一時的といっても回復するまで早くて3週間、その後は3か月、数年単位にもなります。
治療は、病院ならビタミン剤の処方が一般的ですが、気休め的なものかと思うのは私だけでしょうか。
このような神経麻痺に対しては、寝ぼけた神経や筋力低下した筋肉をたたき起こさなければなりませんので、電気治療やツボ刺激、運動療法は積極的に施行しなければなりません。
最初の3週間が治し時です。
ふと思いましたが、日頃から腰痛があって、ヘルニアや狭窄症を指摘されている人が、たまたま酔っぱらって板の間で寝てしまい、朝起きたら膝下がしびれて動かなくなっていて、病院に運ばれた・・・
そんなケースがありそうですが、その場合、病名は「腓骨神経麻痺」ではなく、”腰の怪しい病名”がさらに悪化して神経症状が出たとして、腰の手術へと一直線に突き進んでいくのでしょうね・・・。恐ろしい・・・
受傷するタイミングがちょっとずれると、一生にかかわることになってしまいます。
そして「橈骨神経麻痺」ですが、腋の下や上腕の肘に近い部分に、長時間にわたり圧迫が加わると起こります。
例えば、ベンチで腕を背もたれの後ろに下げる姿勢でうたた寝すると、腋下が圧迫されます。
横向きに寝転がり、上腕に自分の頭をのせて寝たりするのも、典型的な発症原因です。早い話が腕枕ですね。
朝、起きた時に、コントの恨めしやポーズになって慌てられるようです。
ちなみにこれは「ハネムーン麻痺」と呼ばれています。
ハネムーンゆえの麻痺でしたら、それならそれで諦めもつきそうなものですが、自分一人で「ハネムーン麻痺」なるものをやらかした日には、立ち直るのに少々時間がかかりそうです。
実際に神経麻痺が治るまでにも、時間がかかるんですけどね・・・。