「小殿筋」(しょうでんきん)~下肢痛の大御所~

1. はじめに
~その痛み、小殿筋が原因かもしれません~
「腰がギクッとなった、やってしまった」
「股関節の横が痛い」
「お尻の奥が痛くて歩けない」
痛みの表現はそれぞれですが、患者様が小殿筋(しょうでんきん)を痛めた時には、まさにこのような症状を訴えられます。
(※漢字表記は「小臀筋」でも「小殿筋」でも間違いではありませんが、読みやすさを考慮してここでは「小殿筋」と表記しておきます。)
お尻の構造を見ると、表面に大殿筋があり、その下に中殿筋、さらにその奥深いところに小殿筋が存在しています。骨盤の中央あたりから、外側の股関節を覆うように位置しているのが特徴です。
「Clinical massage」James H.clay/David M.pounds著・医道の日本社刊
この小殿筋こそが、腰痛・殿部痛・股関節痛に深く関わる【下肢痛の大御所】なのです。
小殿筋が攣(つ)ったり凝ったりすると、臀部(お尻)から大腿部(太もも)の裏や外側、さらにはふくらはぎにかけて、痛みやしびれがあらわれます。
俗に言う「坐骨神経痛」はこの症状につけられる病名です。
つまり、一般的に「坐骨神経痛」と呼ばれている症状の多くは、実はこの【小殿筋のトラブル】によって生じています。
「トリガーポイントマニュアル」ジャネット・トラベル/デイヴィッド・サイモンズ著
2. 痛みの真実
~神経の圧迫ではなく「筋肉の傷」~
「坐骨神経痛の原因は、坐骨神経の根元が圧迫された結果である」
というのが、昔からの言い伝えです。
そして、その圧迫の元として「椎間板ヘルニア」や「脊柱管狭窄症」といった病名がつけられます。
今現在でも、【腰の神経の圧迫】を取り除くべく、日々手術が行われているのです。
しかし、その実態は、坐骨神経に沿った「筋肉」が凝ったり攣ったりして痛みやしびれを出しているだけなのです。
たったそれだけのために、体にメスを入れる手術が行われている。それが現実です。
痛みのメカニズムを正しく理解する鍵は、神経の先端にあります。
神経の先っぽには「侵害受容器」と呼ばれる、【センサーの役割を果たす細胞】が存在します。
筋肉などの細胞が損傷すると、「ブラジキニン」や「プロスタグランジン」と呼ばれる【痛みの原因物質】が放出されます。
その物質に付近の侵害受容器が反応し、電気信号が発生して背骨の中の脊髄(せきずい)に入り、脳へ伝わることで初めて人間は「痛み」と認識するのです。
神経の途中や根元にはこのようなセンサーは存在せず、圧迫されても痛みの原因物質は発生しません。
(※神経の途中から異常な情報が脳に届くとすれば、それは「異所発火」と呼ばれる神経細胞自体のトラブルであり、全く別の次元の病気の話になります。)
3. 医療現場の現実~
なぜ「腰の治療」ばかり行われるのか~
それにもかかわらず、こうした症状で受診すると、真っ先に腰の骨や椎間板の検査が念入りに行われます。
そして、ほんの少しでも疑わしい所見があると、そこが痛みの原因だと決めつけられてしまうのです。
正常な、加齢のためのただの老化現象による骨の変形や椎間板のヘタリであっても、手術の標的にされてしまいます。
逆に、完璧で非の打ち所がない健康体の方が俗にいう「坐骨神経痛」になった場合、MRI画像を見ても異常がありません。
「筋肉の痛み」という発想がないお医者様は痛みの原因を説明できず、「手術するほどではない」と言葉を濁すことになります。
患者が「痛いのはお尻(臀部)や太もも(大腿部)であって、腰は大丈夫です」と訴えても、約100年前の先人のマニュアルに基づいて「腰が悪い」とされ、腰への治療が続けられます。
的はずれな場所を治療しているのですから、痛みは引かず、それでも信じて通院治療を続け、残念な日常を送られている方も大勢おられます。
それによって病院側が潤っていらっしゃるのが現実です。
「信じる者」と書くと「儲かる」という字に似ていると思うのは、私だけでしょうか。
4. 解決策
~正しい治療と自宅でできるセルフケア~
では、どうすればこの痛みは改善するのでしょうか。
答えはシンプルで、【筋肉のこわばりを取る】ことです。
接骨院で行う施術も、押したり、揉んだり、叩いたり、電気を流したり、温めたり、湿布を貼ったりするしかありません。
しかしながら、手術する意味がない以上、こうした方法で地道に痛みを取っていくしかないのです。
(※施術者の技術による当たり外れは多少あるかもしれません。そこは運任せですね。)
「自力でなんとかしたい」という方は、以下のセルフケアをぜひ試してみてください。
①テニスボールマッサージ
テニスボールやゴルフボールをお尻の横(小殿筋のあたり)にあて、体重をかけながらグリグリとマッサージします。
②小殿筋ストレッチ
- 仰向けになり、痛む側の足首を両手でしっかり持ちます。
- おへその上(余裕があれば胸の上)に向かって、足を引き寄せます。
- そのまま10秒ほど保持し、お尻や太ももの裏の筋肉をしっかり伸ばします。
「トリガーポイントと筋筋膜療法マニュアル」Dimitrios Kostopoulos & konstantine Rizopoulos著・医道の日本社刊
マッサージやストレッチはあくまで予防であり、施術や治療の補助的なものであり、それだけで完治させようとすれば根気と根性が必要です。
とは言え、日々のセルフケアとしては大変有効ですので、ぜひ頑張って続けてみてください。




