背中の痛み

「Clinical massage」James H.clay/David M.pounds著・医道の日本社刊

「うっ、腰が!」と痛がる人は、皆さんも日常で見かけたことはあると思います。
腰を痛がる人は、中腰か、しゃがんで腰に手を当てておられます。

それでは、背中を痛がる人を見かけたことは?
たぶんあまり無いと思います。
腹が痛いときはしゃがんでお腹をおさえ、腰が痛いときはどこかにつかまりながら腰に手をやりますが、背中だといかんせん手が届かないので、ただただ固まっているしかないからです。
せいぜい、上半身をロボットのようにぎこちなく動かすのが精一杯です。
はたから見れば、何やらやたら動作の遅い人がいるとだけ思われている事でしょう。

接骨院においでる患者さんの比率は、腰痛と背痛で 6 : 4 位でしょうか、世間に知ってもらえず背中の痛みと戦う患者さんがそこそこおられます。
冗談めかして言ってますが、当の本人は相当お辛い様子です。

「Clinical massage」James H.clay/David M.pounds著・医道の日本社刊

背中の筋肉は、肩甲骨に付くものや、肋骨一本ずつにへばり付くものがあります。
「大菱形筋」、「胸腸肋筋」などです。

腕を動かそうとすると肩甲骨が動きますから背中に響きますし、大きく息をしたりして胸郭が広がると、もろに肋骨あたりに痛みが走ります。

背中の「ギクッ」が起こるのは、肩より上に手を挙げた作業をしたりして背筋に負担がかかっての事もありますし、ちょっと背中をひねった拍子になる事もあります。

昔で言えば「筋(すじ)違い」ですが、筋肉の急激な収縮です。

痛さのあまりに背中を反らせて左右の肩甲骨を寄せようとすると、収縮した筋肉をさらに縮こまらせて事態を一段と悪化させます。

ところで、治療で背中に軽く力をかけた時に背骨が「コツンっ」と音がして、その拍子に背中の痛みが楽になるということは珍しくありません。

背中のギクッとした痛みのストレッチ 大川接骨院(石川県金沢市)
「トリガーポイントと筋筋膜療法マニュアル」 Dimitrios Kostopoulos & konstantine Rizopoulos著・医道の日本社刊

ご自身で試される場合は、できるだけ背中を丸め、背中の痛みのある側の腕を胸の前から反対側へ、できれば反対の手で肘を押してみて下さい。

この 「コツンっ」 現象は背中に限らず、腰でも見られます。
脊椎の小さな関節面が微妙にずれていて、正常に戻る時の軟骨の擦れる音か?
それとも、筋肉や靭帯が擦れる音?

その音が何なのかよく尋ねられますが、「よく分からない」というのが本当のところです。

例えば、猫の喉の辺りでゴロゴロ言う音がするあれ。どこの器官がどうなってゴロゴロ言うのか、未だに はっきりとわからないのと同じです。

解明することそのものが困難なわけではなく、「そもそも誰も解明しようとせず、研究しないからわからない」のです。

研究というのは、その先にある「利益」を求めて行うものです。
(純粋に真実を追究されておられる方もおいでると思いますが)

「猫のゴロゴロ」や「背骨のポキポキ」を研究しても、一文にもなりませんから。

話が少しそれましたが、ここまで書いてきたことは、あくまでも「ギクッ」ときた場合です。

高齢者でしりもちをついた時などは胸椎の圧迫骨折もありますし、年齢に関係なく内臓疾患で痛みが出ることもあります。

ご心配ならば医療機関での検査をお勧めしますが、もし、内臓に異常なく、「胸椎があやしい」などと言われても、さすがに頚や腰と違い手術までのお話にはならないと思いますので、ご安心を。

「胸椎ヘルニア」や「胸椎の脊柱管狭窄症」もあることはありますが、まだ幸いなことに「ブーム」が来ていないようですから。

頚や腰を手術しつくしたあと、その辺に目が向けられれば、間違いなく「ブーム」はやってくるでしょう。
そうなれば、やはり頚や腰と同じように、単に筋を違えただけの患者さんにメスが入ります。

これが本当に「筋違い」の話なんですけどね。

Follow me!