マレットフィンガー ~槌指(つちゆび)~
「マレットフィンガー」、槌指(つちゆび)とも言われます。
突き指と同じようにくくられますが 手の指の第1関節が木槌(きづち)の様に折れ曲がる形になることからそう呼ばれています。
球技をしていてボールが当たり受傷することが多いですが、ドアノブやシャワーヘッドにコツンとぶつけただけでなってしまう、運の悪い方もおいでます。なぜか、薬指の頻度が高いようです。
腱性マレット
「Clinical massage」James H.clay/David M.pounds著・医道の日本社刊
怪我の状態としては、指を伸ばす腱の断裂や、腱の付着している部分の骨折です。
腱の断裂の場合は「腱性マレット」、骨折の場合は「骨性マレット」と言います。 痛みがひどく、腫れが顕著なときは骨性マレットと思って下さい。
小さい指の関節だから、しばらく動かさなかったらそのうち治るだろう…と思ったら大間違いです。放置すれば一生そのまま曲がったままです。曲げる事は出来ますが、伸ばせません。
治療としては、手術か、保存的に固定か、というところです。たいがい整形の治療はどちらかしかありません。
骨性マレットでしたら結構手術もされますが、腱性マレットの場合、非常に細かい手術となる上、手術後も腱が薄いがために再断裂や癒着などの恐れもあり、手の外科の専門でないとなかなか…という処もあり、多くは保存的にアルミの添え板か装具での固定になります。
そこで何よりも患者さんがびっくりされるのは、その保守的固定が8週間から12週間にも及ぶ、という点です。それを聞くと、水仕事が出来ない、ものが書けないなど、色んな理由で拒否されます。腱性マレットの場合、特に痛みも無いので危機感がなく、余計そんな感じです。
治療は患者さんが選択する権利がありますので、無理強いはしませんが、後の人生を考えると・・・。
固定はこんな感じです。重度だともっと大げさになります。
「Clinical massage」James H.clay/David M.pounds著・医道の日本社刊
納得して固定しても、アルミ副子や装具で蒸れたり、テープでかぶれたりして、皮膚はそこそこボロくなり痛々しい状態になります。 しかも、その努力の甲斐あって完全に治れば良いのですが、まず100%完治はありません。完全に元通りとまで行かずに多少は曲がってしまうのです。
どうしても固定後、関節は固まってしまいます。機能回復のリハビリとして、お湯に浸けたり、様々な物理療法を行い、握って開いての自主トレを頑張って、まともに曲がるようになるまでに、これまた月単位の日数がかかります。
ともすれば、アキレス腱断裂のほうがまだすんなりと治りが早いような気もします。
しかし、受傷してしまったなら覚悟を決めて、2,3か月仕事やお風呂の不自由さを我慢するか、あるいは、2,3か月なんてとんでもない、たかだか指が曲がったくらいで、と開き直り放置するか…です。
マレットフィンガーは、中途半端な治療では治りません。
が、ちょっぴり曲がっている指も、見方によってはチャーミング…と思ってくれる人もどこかにおいでるやも知れませんから、治すも治さないも、決めるのはあくまで御本人ということで…。