棘下筋(きょくかきん)…肩の痛みの80~90%を占めるのは…!
以前に肩の痛みの話で「肩甲下筋」について書きましたが、それとひとセットになっている様な筋肉なので「棘下筋」(きょくかきん)にも触れておきます。
” ひとセット”と言うのは、肩甲下筋を伸ばせば棘下筋が縮み、棘下筋を伸ばせば肩甲下筋が縮むという、対の関係にあるからです。
「3D 踊る肉単」原島広至著・エヌ・ティー・エス刊
「肩甲下筋」と「棘下筋」、この一対の筋肉で肩の痛みの80~90%を占めると思います。
棘下筋は肩甲骨に被さっており、上腕骨の外側をぐるりと巻いてくっついています。ですからこの筋肉がこわばり、縮みこめば、付着部の肩の前方~側方に痛みが来ます。
若い人は主に投球動作で傷める事が多いのですが、その理由は、ボールを投げた時、ボールと一緒に肩から先が飛んでいってしまうのを防ぐという重大な役目を棘下筋は持っており、棘下筋へかかる負荷は相当なものがあるからです。
しかし、だらんと腕を下に垂らしているだけでも、この筋肉は緊張を強いられますので、常に休まることがありません。そのためスポーツもしていない年配の人に、この筋肉の不具合がおきる確率も大変高いようです。
運動したらしたで傷め、しないならしないでも痛くなる、どの筋肉にも言えることですが適度というのはなかなか難しいものです。
この棘下筋の作用は「腕を後方に引くこと」ですので、傷めると女性の場合では、例えばブラジャーのホックをかけたり、帯を後ろで結んだりが困難になります。
痛いのは肩関節なのに、元凶は背中の肩甲骨近辺にあるとはわかりませんので、押されて初めてびっくりする程の痛みのあることで納得されます。
また、押さえてみなければ気付かない場所ですので、結果的には相当時間がたって充分すぎるほどの筋硬結になってから受診される方がほとんどです。
「ID触診術」鈴木重行・平野幸伸・鈴木敏和著・エヌ・ティー・エス刊
この棘下筋、痛みやしびれの範囲は肩関節はもとより上腕、前腕、指先にまで届きます。
肩の痛みだけの場合は、四十肩、五十肩、肩関節周囲炎、勢い余って腱板損傷と、あっさり診断されますので心配ないのですが、(この病名?もかなりいい加減ですが)運悪く肩の痛みよりも上腕や前腕の痛みが強い時は頚椎に疑いをかけられます。
ましてや痛みよりもしびれを訴えたり、それが指先まで及んでいた日には、100%頚椎の検査となります。
知らないうちに肩甲部の筋肉が凝り、連鎖的に首すじの筋肉も凝り、首を動かすと痛くなる、これは200%で頚椎のMRIになります。そしてヘルニアでも見つかろうものなら・・・。悲しいかな現在の整形外科の診断ではそうなります。
なぜか肩の痛みより、腕の痛みやしびれ、特にしびれに敏感に興味を示される先生方が多いようです。痛みとしびれは知覚神経が活発に反応している証拠で、メカニズムは同じです。(それにヘルニアで痛み、しびれは出ません。)
単なるMPS(筋筋膜性疼痛症候群)の症状に過ぎませんが、なぜか麻痺の前兆のような、たいそうな説明をされる先生もおいでると聞きます。
「トリガーポイントと筋筋膜療法マニュアル」Dimitrios Kostopoulos & konstantine Rizopoulos著・医道の日本社刊
痛み、しびれと「麻痺」は真逆のものです。
どこでどう入れ替わるのか、ぜひ説明してもらいたいものです。
あなたが、 もし、大きな病院(たいそうな説明をされる先生がおいでる処)を受診して肩を診てもらいたい時は、まず肩の痛みを訴えましょう。
肩はさほどではなく、上腕や前腕、指先の症状が強い場合でも、棘下筋が原因ならば圧痛点がありますから、誰かに押してもらい、そこを探しておいて「ここが痛い」と訴えた方がいいでしょう。
そして腕の痛みやしびれなどは口に出さないほうがいいかもしれません。間違っても首が痛いなどとは言わないことです。
あくまでも、「肩が痛い!」と。
そうでないとお忙しい先生方は絶対にわざわざ肩甲骨の筋肉などは触ってはくれませんし、また、そこが原因とは思ってもおられないようですから、間違いなく関係のない頚の検査にまわされます。
MRIの検査料もばかになりませんからね。(ここのところは私の意見ですので、ここでしか言えませんが・・・。)
治療としてはマッサージや電気治療とストレッチ、これは、どの筋肉でも変わりません。
が、棘下筋の筋硬結をほぐすのはちょっとばかり痛いかも・・・ま、チョットだけですけど。
また、寝転がってテニスボールを肩甲骨の下に当ててグリグリするのも効果的です。ストレッチはこの棘下筋と対の肩甲下筋も合わせてやっておかないと、今度はそちらが不機嫌になりますので。
とはいえ、痛い時に自力で肩のストレッチをされる根性のある方はめったにお目にかかれませんが、まねごとだけでもしておきましょう。
「トリガーポイントと筋筋膜療法マニュアル」Dimitrios Kostopoulos & konstantine Rizopoulos著・医道の日本社刊
・・・・腕の痛みやしびれで、頚椎ヘルニアと診断された方、棘下筋に痛みはないですか?